目次1.3.1.放射線帯高エネルギー粒子(MeV)の磁気嵐主相における消失機構
1.3.2.放射線帯高エネルギー粒子(MeV)の磁気嵐回復相における再形成機構
1.9.高エネルギープラズマ加速とその人間活動への影響を知るために
3.4.将来ミッション(放射線対策・小型衛星化)へのインパクト
内部磁気圏ミッションは、地球半径の10倍以内の内部磁気圏において、これまでほとんど行われて来なかった磁場・電場・粒子・波動の同時観測を行うことにより、プラズマ圧に対して磁気圧が支配的な役割を果たす宇宙空間におけるプラズマの加速・加熱機構、地球表層近くの電離層とのエネルギー・粒子のやりとりの機構を明らかにすることを目的とする。複数衛星による観測は2010年頃に計画されているSCOPEミッションに譲り、ここでは2006−7年頃に1機の小型衛星で内部磁気圏を集中的に長期観測することを想定している。
この内部磁気圏領域は、その強い磁場との相互作用により、地球磁気圏の中でも最も高エネルギーのプラズマが生成される領域(放射線帯)を含んでおり、一方、人類が宇宙に進出する際に、最初に通過しなければならない領域でもある。このため、磁場のある天体における高エネルギープラズマ生成・宇宙空間における人間活動への影響予測、という両側面の重要性を持っている。
言葉の解説: プラズマ:電子・イオンを含めた電離気体 ここで「粒子」と呼んでいるのは、 電子やイオンなど、プラズマを構成している粒子を指す。 プラズマ圧・磁気圧:プラズマと磁場を含めて流体として扱う電磁流体力学では、 プラズマの圧力(P=nkT)と磁気圧(P=B^2/2μ)が定義できる。平均的な 描像では、この2つは釣り合っていることが多い。 電離層:地球大気上層部で、電離したプラズマが多量に存在する層。 高さ100-600km。地球半径は6000kmなので、磁気圏から比べれば、 地球のすぐ表層に存在する。 SCOPEミッション:遠地点30Re、近地点3Reの赤道面を飛翔する複数(4−5機)衛星 計画。太陽風・磁気圏境界域、リコネクション領域を中心に想定されて いるが、近地点付近では内部磁気圏にもかなりの時間滞在する。 Scale COupling in Plasma Environmentの略称。
内部磁気圏とは、地球の固有磁場に太陽風が衝突して形成されるプラズマで満たされた地球周辺の宇宙空間(磁気圏)のうち、地球半径(以後、Reで表す)の10倍よりも内側で、地球のダイポール磁場が比較的強い領域である。この領域は、内側から「放射線帯(内帯:1.5-2Re)」、「放射線帯(外帯:2.5-4Re)」、「プラズマ圏(1-4Re)」、「リングカレント領域(3-6Re)」、「プラズマシート(4-6Re以遠)」と、主にプラズマの特徴によってその領域が分けられる。磁場強度は、地球中心からの距離の3乗に反比例して減衰してゆく。
「放射線帯」は、100keVから数十MeVにわたる相対論的電子・イオンが存在している領域である。特に電子は、内帯と外帯と呼ばれる空間的な2重構造を持って存在し、その間にはslot regionと呼ばれる電子フラックスの極端に低い領域が存在する。「プラズマ圏」は、地球表層近くの電離層から上がって来た低エネルギー(1-10eV)プラズマに満たされた領域である。プラズマ圏の外側の境界では、内側から外側に向けてプラズマの密度が急激に下がっている。「リングカレント領域」は、磁気嵐やサブストームにおいて、より外側の「プラズマシート」の夜側(太陽と反対側)部分から注入された1-100keV程度のエネルギーのプラズマが地球の周囲を回り、電流を形成している。
内部磁気圏はおおまかには上で述べたような構造をしているが、内部のプラズマは静止しているわけではない。一般的には磁気圏の外側にいくほど、太陽風など外部からの変動の影響を受けやすい。地球磁気圏の変動の基本的な描像としては、「サブストーム」と「磁気嵐」がある。サブストームは、太陽風から流入したエネルギーがいったん夜側のプラズマシートにたまり、急に爆発的に内部磁気圏や電離層に向けて開放される現象であり、継続時間は1−3時間、1日に数回は起こる現象である。一方磁気嵐は、太陽面の爆発などに関連した高速・高密度の太陽風が地球磁気圏に到達した際、(特に太陽風中の磁場の向きが南向きになると)、多量の太陽風中の粒子、エネルギーが磁気圏内に入って大きな擾乱を引き起こす現象である。磁気嵐の継続時間は1−3日、1月に1回程度起きる現象である。サブストームに伴ってプラズマシートやリングカレントは大きく変動する。磁気嵐が起こると、プラズマ圏、放射線帯など、より内側の領域も大きく変動することになる。
磁気嵐中では放射線帯において、「磁気嵐主相における急速な外帯の消失」と「磁気嵐回復相における外帯の再形成(粒子加速)」の2つの顕著な現象が、あけぼの衛星などの観測により観測されている。
1.3.1.放射線帯高エネルギー粒子(MeV)の磁気嵐主相における消失機構
磁気嵐主相において、放射線帯外帯の高エネルギー粒子が急速に消失する現象の説明としては、
(a)磁気嵐の主相で、リングカレントにより磁場が減少することによって断熱的な 冷却が起こり、相対的に高エネルギー粒子の密度が減少する(Kim and Chan, JGR, p.22107,1997 他)。 (b)対流の増大による昼側磁気圏境界面への輸送→太陽風中への散逸(Buehler, JASTP, 2002他) (c)プラズマ波動の増大によりピッチ角散乱が起こり、大気へ降り込むことによる ロス(Thorne, Science, p.287, 1977 他)といったモデルが提唱されている。これらのメカニズムがそれぞれどのように効いているかを同定していくためには、
(a)磁場の減少量をいくつかの経度・地球中心からの距離で計測し、それによる 断熱冷却の量をモデル計算し、観測と比較する。この磁場の減少量をグロー バルにモデル化するには、地上磁場観測網、既存の静止軌道衛星(GOES) など、他の観測データも併用することができる。従って、本ミッションの1機 の衛星で高エネルギー(MeV)粒子のピッチ角分布、磁場を計測していれば、 後はこれらのデータと組み合わせて補間する事が可能である。 (b)内部磁気圏赤道面で観測される電場の時間履歴のデータを用いて粒子のドリ フト運動をモデル計算し、観測と比較する。本来ならば、ローカルな電場と グローバルな電場を区別するために、赤道面で数Re離れた2カ所以上で同 時に電場を計測するのが望ましい。しかし、アメリカのMMS衛星など他のミッ ションと同時に観測を行うことで、複数の観測点をカバーできるようになる。 (c)ホイッスラーモード波の振幅を衛星で計測し、モデル計算と比較する。また、磁気嵐によっては、主相付近で外帯が消失している際、slot region(内帯と外帯の間)及び内帯のフラックスが増大することが知られている。このフラックス増大のメカニズムは、「外帯領域からのenhanced diffusionによる粒子補給」、「ローカルな粒子加速」等の可能性が考えられているが、電場・磁場と波動をあわせた観測例が少ないため、詳細は明らかになっていない。
上記にリストアップされているように、これらの研究を行うためには、磁気赤道面付近において、MeV粒子のピッチ角分布、磁場、電場を同時に計測する必要がある。時間分解能は1分程度でよいと思われる。磁気嵐の頻度は1ヶ月に一回程度で、大きなものはより頻度が低くなるので、常時データを取っていることが重要となるであろう。
1.3.2.放射線帯高エネルギー粒子(MeV)の磁気嵐回復相における再形成機構
磁気嵐の回復相において、放射線帯外帯の高エネルギー粒子が急速に再形成され、磁気嵐前の状態よりも粒子の量が増えることが、近年のあけぼの衛星などの観測により、知られるようになってきた。この急激な放射線帯の再形成は、磁場のある惑星における粒子加速機構の基本的な形態として、また、人工衛星や宇宙空間での人間活動に直接影響を与える粒子線の源として、重要な研究対象である。この外帯の急激な再形成機構の説明としては、断熱的な加速によるもの(外部供給説)と非断熱的な加速によるもの(内部加速説)との2つの概念が提唱されている。前者は、磁気モーメント(エネルギー)の大きい電子(high μ電子)の起源をplasma sheetに設定し、そこからの断熱的な輸送で相対論的エネルギーまで加速されるものであり、後者は、磁気嵐時等に近地球領域に注入されたhot electronが、その場でプラズマ波動等と相互作用することにより、加速されるというものである。
(a)外部供給説:radial diffusion(拡散)と誘導電場(substorm injection)に
より、放射線帯の外から高エネルギー粒子が注入・加速される。単純な
radial diffusionだけでなく、ULF波動によるradial diffusion(Elkington
et al., GRL, 3273, 1999)、太陽風に依存したempiricalなdiffusion係数
などを考慮した研究もある(Li et al., GRL, 1887, 2001)。
(b)内部供給説1:ホイッスラーモード波との相互作用による放射線帯内部での
非断熱加速
・broadbandなホイッスラーモード波との相互作用による放射線帯内部での
統計的な粒子加速(Summers et al. JGR, 20487, 1998, Summers et al,
JGR, 2625, 2000、他多数)。
・monochromaticなホイッスラーモード波との相互作用による放射線帯内部
での粒子加速(Roth et al., Ann. Geophys, 631, 1999, Albert, JGR,
21191, 2000)。
(c)内部供給説2:ULF波動との相互作用による放射線帯内部での非断熱加速
(Liu et al., JGR, 17391, 1999, Summers et al., JGR, 15887, 2000;
Tan et al., GRL, 2004GL019459, 2004)。
(d)内部供給説3:サブストームによるinduction電場による非断熱加速
(Kim et al., JGR, 7721, 2000)。
(e)内部供給説4:電磁波モード(R-X, L-O, L-X)の波との相互作用による
粒子加速(Summers et al., JGR, 10853, 2001)。
外部供給説と内部供給説のどちらが効いているかを同定していくためには、粒子のphase space densityが中で先に増えるか(内部供給)、外から順に増えていくか(外部供給)、を測ることが考えられる。現在は、両方を支持する観測が別々にでている。この切り分けのためには、
・磁気赤道面で、放射線帯粒子のphase space densityのradial profileと波動の スペクトルを測る ・リングカレントの効果も入れた磁場モデルの構築 ・hot electron(eV, keV粒子)の分布(種粒子)を測る ・波動の共鳴条件を押さえるために、低エネルギープラズマ(thermal plasma)の 密度を計測する。といった手法が重要であろう。さらに、内部粒子供給説の諸説を切り分けるために、
・ホイッスラーモード波の振幅、波数スペクトルを計測し、モデル計算と比較する ・ULF波動の磁場、電場変動を経度の異なる2地点(数Re離れた)で計測し、 波の位相の経度方向の伝搬を調べ、モデル計算によってどれだけ粒子がエネルギ ーを得ることができるかを見積もる。 ・再形成時の粒子の増大の起こる場所がプラズマ圏の中か外かを、その場のプラズマ 密度の観測から同定する。プラズマ波動との相互作用による内部加速に関する理論 の多くは、プラズマ密度の低い場所で非断熱的な加速が起こることを示しており、 外帯再形成時の内部磁気圏のプラズマ環境(fp/fc)を同定することで、具体的な加速 の条件を切り分けることができる。といった観測が重要である。これらの観測においては、1地点の観測だけでなく、電離圏高度のNOAA衛星、静止軌道のGOES, LANL衛星との共同観測を行うことが重要である。これらの衛星は電場や磁場などを計っていないものが多いが、粒子の分布を与えることができるので、磁場・電場・粒子・波動を同時観測する本ミッションの衛星観測と組み合わせることにより、上記モデルの切り分けを行うことができる。
さらに、上記の磁気嵐回復相における高エネルギー粒子の生成の他に、sudden commencement (sc)など、太陽風起源の急激な磁場変化により、放射線帯粒子が加速されることも知られている。このメカニズムを詳細に調べるには、電場の計測と粒子のドリフト計測を比較し、モデル計算によって定量的に調べるのが良いであろう。モデル計算の際、結果は背景磁場の形状に大きく依存するので、他の衛星ミッションのデータと合わせて、数カ所で計測した磁場データを用いる必要がある。
磁気嵐における地磁気の変化は、主に内部磁気圏に注入されたプラズマ粒子による反磁性電流効果として理解される。注入されたプラズマの圧力分布は地球に近い領域では内向きの圧力勾配を持ち、遠い領域では外向きの圧力勾配を示す。この圧力勾配と釣り合うために磁力線に垂直方向に電流が流れるため(grad P = J×B)、地球近傍では東向き、遠方では西向きの電流が流れるが、総量としては西向き電流が卓越し、地上の磁場を減少させる。減少の割合は地上において最大でも1%程度であるが、磁気嵐の際に内部磁気圏に注入されるエネルギーの総量は10^15〜10^16Jにも達する。一方、磁場の曲率勾配と強度勾配の影響で、イオンは夕方側、電子は朝方側に輸送されるため、プラズマの圧力に非対称が生じる。その結果、リングカレントは非対称に流れている。リングカレントを構成しているイオン・電子は20-200keV程度のエネルギーを持ち、上記した放射線帯粒子(100keV-10MeV)の種粒子としても重要である。
リングカレントの発達は、磁気圏電場の発達によるプラズマの注入に伴う断熱加熱の効果と、注入される粒子の量が増大することによる効果の二つが考えられ、内部磁気圏に注入される粒子エネルギーの総量の増大を表している。太陽風と地上磁場の直接比較では、前者の効果が卓越していることが示唆されているが、粒子追跡シミュレーションではプラズマシートの密度増大の効果を考慮することが重要であることが示されている。また、近年のCRRES衛星などの観測により、磁気嵐の時には、プロトンではなくO+イオンがリングカレント粒子の主要な部分を占める、という観測もなされている。このO+がどのようにして加速・供給されているか、また、リングカレントの消滅過程の時定数をどのように変えるか、という問題も未解決である。O+の問題は、長期的にみた地球大気の散逸機構にも関わっており、惑星大気の歴史を議論する上で、重要である。
リングカレントを研究してきたこれまでの経緯から、以下のような問題意識が挙げられている。
(a)粒子のドリフトを計算する際の電場モデル・磁場モデルは従来、非常に シンプルなものしか使われていない。 (b)極冠域の地上磁場から推定される磁気圏電場の大きさでは、観測される プラズマの注入を説明しきれない。 (c)リングカレントの大きさを表す指標として、低緯度の磁場の北向き成分を 平均したDst indexが従来から使われているが、このindexが実際のリング カレントの成分をどれだけ表しているか?
特に(a)のためには、電場の時間履歴を衛星で計測し、粒子のドリフト運動のモデル計算に用いることが考えられる。しかし、人工衛星で観測される電場は、ローカルな(局所的な)電場とグローバルな電場の重ね合わせであることが予想されるため、この2種類の電場を区別する必要があるであろう。MMSや他の衛星ミッションの電場観測と組み合わせることにより、ローカルな電場とグローバルな電場を区別する手法が可能になるであろう。(b)は、前述したように、電場だけでなく、プラズマシートの密度増加も、リングカレントに寄与していると考えられる。磁気圏尾部プラズマシート域での粒子計測と比較することが重要になってくるであろう。
参考のために、磁気嵐中のリングカレントの生成・消滅モデルとしては、以下のようなものが挙げられている。
生成機構 (a)大規模ポテンシャル電場による粒子の注入 (Kavanagh et al., JGR, 5511, 1968) (b)誘導電場による粒子の注入 (c)拡散的輸送(Lyons and Schulz, JGR, 94, 5491, 1989) (d)すでに内部磁気圏にあった粒子の内側Lシェルへの移動 (Lyons and Williams, 85, 523, 1980) (e)電離圏から直接の注入(Cladis and Francis, JGR, 90, 3465, 1985) リングカレント(L=3−8)への電離圏イオンの直接供給の観測はあるものの (Sheldon et al., GRL, 25, 1617, 1998)、その機構は依然不明のまま。 消滅機構 (a)中性大気との衝突による電荷交換反応 (b)イオン同士のクーロン衝突 (c)波動粒子相互作用によるピッチ角散乱
磁気嵐やサブストームなど、地磁気活動度が上がるにつれて、リングカレントを形成するイオンのうち、電離圏をもともとの起源とする酸素原子(O+)イオンの割合が増えてくることが、これまでのCRRES衛星などの観測により明らかになってきた。この酸素原子イオンの供給メカニズムとしては、
(a)磁気圏尾部プラズマシートの酸素原子イオンを電場によって内部磁気圏へ注入。 (b)内部磁気圏にもともと存在する電離圏から供給された低エネルギーの酸素原子イオンを加速。という2種類のメカニズムが考えられるが、具体的にどれだけの酸素原子イオンがプラズマシート・内部磁気圏に存在しているか、どのような加速メカニズムが考えられるか、に関しては、ほとんどわかっていない。これらのメカニズムを同定していくためには、内部磁気圏ミッションによるイオン種ごとの粒子の3次元分布関数、磁場、電場、波動の同時観測が必要であるとともに、夜側尾部プラズマシートにおけるイオン種観測と組み合わせることも重要であろう。このためには、MMS衛星などとの同時観測が考えられる。
また、リングカレントの酸素原子イオンの割合が増えた場合、プロトン(H+)のみで構成されたリングカレントと異なる時定数でリングカレントの減衰が起こることが予想される。特に波動粒子相互作用によるリングカレント粒子の電離圏への降り込みは、O+が波動とより相互作用しやすくなって、減衰が早まる、という考え方と、O+が波動を吸収する事によってプロトンを減衰させる波動が弱くなり、リングカレントの減衰が遅くなる、という対立するモデルがあり、これも内部磁気圏ミッションで解決すべき問題である。
リングカレントを形成するO+イオンは、1.8で述べる重イオンを含めた地球周辺の物質の収支の一端を表しており、その供給と消滅のメカニズムの探査が必要である。
サブストームは磁気圏・電離圏における擾乱の基本的な形態であるが、この擾乱を最初に引き起こす領域が10Reよりも内側の内部磁気圏領域とする説と、20-30Reのreconnection領域であるとする説がある。内部磁気圏がサブストームの開始の最初である、とする説は、current disruption model (e.g., Lui, JGR, p.1849, 1991), IMFのnorthward turning (Lyons, JGR, p.19069, 1995), ballooning instability (e.g., Ohtani and Tamao, JGR, p.19369, 1993)などがある。これらが取捨選択されずに残っている原因は、前述したように 10Reよりも内側で、プラズマの3次元分布関数、磁場、電場を同時に観測している衛星がほとんどないことに起因している。CRRESやAMPTE/CCEなど、内部磁気圏を観測している衛星を元にしてサブストームオンセットを議論している論文のほとんどは、この内部磁気圏原因説を採っており、GEOTAILやISEE, AMPTE/IRMなど、10Reよりも外側を観測している衛星データを使った論文がほとんどNear Earth Neutral Line(NENL)モデルを採用するのと、好対照をなしている。特に内部磁気圏では、サブストーム時に磁場が急に(数分間)tail-likeになる現象、東向き電場のパルス、非常に速い磁場変動、など、NENLモデルでは説明できない現象がいくつも観測されている。10Reよりも内側の領域を、それよりも外側の領域と同じパラメータで長期間計測することにより、これらの内部磁気圏原因説を取捨選択することができる。さらに、MMS、Cluster-II, GEOTAILといった磁気圏尾部の衛星データと比較する事により、サブストーム開始が内部磁気圏であるか、NENLであるか、という議論に決着をつけることができるであろう。
さらに、サブストームのオンセットメカニズムがたとえ解明されたとしても、サブストームのすべてが説明されたわけではない。特に重要なのはエネルギー収支の問題である。サブストームはgrowth phaseにlobeに貯められた磁場のエネルギーが、reconnectionによってプラズマの運動とともに地球方向に運ばれ、最終的に電離層で消費されてゆくプロセスである。reconnection領域からやってきたエネルギーが電離層へ運ばれてゆく過程は、主に10Reよりも内側の磁気圏で起こっていると考えられる。内部磁気圏の衛星ミッションにより、この領域における電離圏へのエネルギー消費過程が解明されることが期待される。
磁気嵐時のサブストームにおいては、この領域でbroadband electronsと呼ばれる特異な電子が観測されることがDMSP衛星やCRRES衛星の観測からわかっている(Shiokawa et al., GRL, p.2529, 1996; JGR, p.14237, 1997; Phys. Chem. Earth, p.281, 1999)。この現象は、エネルギーが30eVから30keVまでの全体にわたって非常に加熱された特殊な電子の発生とその電離圏への降り込みで、オーロラ帯よりも低緯度側(磁気緯度50−60度=内部磁気圏)で観測される。このことは、磁気嵐中のサブストーム時には、通常時とは違ったプラズマの加速・加熱機構が内部磁気圏に存在していることを示しており、プラズマの3次元分布関数、磁場、電場を内部磁気圏で長期間観測することにより、このような機構が何であるかを解明できることが期待される。
地上多点データの解析などから、内部磁気圏は、外部から流入したbroadなスペクトル構造をもつ擾乱の周波数を選択し、特徴的な地磁気脈動を作り出す領域であることがわかってきている。ポインティングフラックスSはE×B/μ0で表され、波のエネルギーの大きさと伝搬方向を表す。従って、磁場と電場の3成分を計測することにより、各周波数における波のエネルギーの伝搬特性の議論が可能になる。このような研究は、これまであけぼの衛星やPOLAR衛星などによる数例のイベント研究を除いて、ほとんど行われていない。内部磁気圏の赤道面を飛翔する衛星によって地磁気脈動を長期観測し、統計的な処理を行うことにより、地磁気脈動が運ぶエネルギーの流れの全体像が明らかになることが期待される。
さらに、アルフベン波の速度がB/sqrt(nmμ)で表されることから分かるように、地磁気脈動の特性は、密度構造に大きく左右される。定在波の周期はプラズマ密度によって変化するし、グローバルな振動モードを持つ脈動はプラズマ圏の形やその密度により、性質が変わる。プラズマ密度を推定するには、粒子計測によるモーメント計算による方法とプラズマ波動の周波数から計算する方法があり、電磁場による地磁気脈動の観測と同時に、粒子密度・波動を計測する事が重要である。
あけぼの衛星搭載のプラズマ波動観測装置(PWS)による12年間の観測結果は、プラズマ圏において多種多様なプラズマ波動現象を発見し 、プラズマ圏は静穏であり、主だったプラズマ波動は磁気圏にしか存在しないという従来の概念を書き換えている。プラズマ圏では、磁気赤道域を中心に地磁気的に静穏な場合でも多様なプラズマ波動現象が惹起している。それらは、EPWAT現象、EP-ESCH波動、f_OH波動等である。EPWAT現象は、プラズマ圏磁気赤道に局在した狭い領域でUHRモードからZモードのプラズマ波動の強度が急増する現象である。このEPWAT現象には、磁気嵐に伴い磁気圏から流入したエネルギーに呼応して変動する成分と、定常的に存在する成分があることが判明しているが、その原因となる物理過程はまだ多く未解決である。特にその自由エネルギー源が何でなぜそれが磁気赤道に局在するのかを解明しなくてはならない。そのためには広いエネルギーレンジの粒子計測を磁気赤道域で実施することが本質的に重要である。またEP-ESCH波動はf_Qn付近の静電的プラズマ波動が極めて狭帯域に励起される現象で、このEP-ECSH波動との非線形波動粒子相互作用を通じて発生しているf_OH波動とともに、静穏時でもプラズマ圏内には、温度異方性をもつエネルギーが数十eV程度の比較的高温なプラズマが豊富に含まれていることを示している。しかしあけぼの衛星では粒子観測が極域に限られていたため、その詳細な描像が粒子計測によっては得られておらず、今後これらを直接粒子観測から実証することは大きな意義をもっている。
一方、擾乱時には、「ロバの耳現象」で代表される大規模なプラズマ密度変動現象が存在する( Oya, 1991; Oya, 1997 )。「ロバの耳現象」は、磁気嵐回復期に磁気赤道域を中心としたプラズマ圏内部領域に、通常のプラズマ密度の1/3から1/5の低密度領域が形成される現象である。最近、IMAGE衛星によって見い出されたplasma void (Sandel et al., 2001) は同一の現象である可能性が高い。この現象の時間空間発展を多点観測から直接観測的に解明することは、プラズマ圏のダイナミックスを考える上で重要な鍵を握っている。ロバの耳現象の時間発展に関する考察から、Oya (1997) は、リングカレントの時間変動に伴う誘導電場によるプラズマのドリフト効果(ベータトロンドリフト)を提唱した。従来、プラズマ圏およびプラズマポーズの形成を支配しているのは、共回転電場と磁気圏対流電場、すなわちともにスカラーポテンシャルで表現される電場と考えられてきた。それに対してベータトロンドリフトの効果はベクトルポテンシャルの時間変化で生じる電場の重要性を指摘したものであり、従来の磁気圏物理では考慮されてこなかった新たな内容をもっており、この機構を観測から解明することは重要な意義をもっている。またこの「ロバの耳現象」に伴って放射されるプラズマ圏キロメーター放射に関しては、興味深い事実が明らかとなってきた。それは、この放射の中に強度の強いR-Xモードの放射が含まれている点である。プラズマ圏内部のような、プラズマ周波数が電子サイクロトロン周波数より大きな領域では、従来知られているサイクロトロンメーザー機構等で直接R-Xモードの電磁波を生むことは不可能であり、またこれまでのモード変換理論(Oya, 1971; Jones 1987)をこの事実にそのまま適用することは困難である。この電波の放射機構の解明は、宇宙空間プラズマにおける新たな電磁波放射機構の解明につながると考えられる。
内部磁気圏における地球起源の酸素原子は、リングカレント(高エネルギーイオン)やプラズマ圏(低エネルギーイオン)に分布していると思われる。地磁気活動度が上昇すると、リングカレントエネルギーの大きな部分が、地球起源の酸素イオンによって担われていることを示唆するデータが、過去の衛星から得られている。この酸素イオンの起源として、磁気圏尾部からの供給、電離層からの供給、およびその場での加速・加熱、が考えられるが、内部磁気圏でイオン種ごとの3次元分布関数を計測することにより、これらの議論に定量的な結論を与えることができる。さらにプラズマ圏のヘリウムイオンや酸素イオンに関しては、DE衛星による観測で地心距離や太陽光フラックスとの相関が示されているが、赤道面での観測はほとんどなく、上記リングカレントの形成との関連も含めて、内部磁気圏衛星による観測が重要である。
1.9.高エネルギープラズマ加速とその人間活動への影響を知るために
上述してきたように、内部磁気圏ミッションは地球磁気圏で最も高エネルギーの粒子が多量に生成される領域(放射線帯)を探査する。この放射線帯の形成には、その種粒子となるリングカレント、エネルギー源となるサブストーム・磁気嵐という擾乱、加速メカニズムに関わると考えられる地磁気脈動・プラズマ波動、などが相互に深く関連している。これらの素過程を調べるためには、電場・磁場・粒子・波動の4つの要素を同時に観測する衛星が必須であるが、これまで内部磁気圏ではそのような探査はほとんど行われてこなかった。本ミッションにより、地球磁気圏における高エネルギープラズマ加速の過程が明らかになることが期待される。
地球磁気圏での高エネルギープラズマ加速の過程は、磁場を持つ天体において、一般的に起こりうることが容易に推定できる。本ミッションによって探査される高エネルギープラズマの生成メカニズムは、宇宙空間における高エネルギープラズマ生成の機構の一つとして広く応用される可能性を持つ。
放射線帯の高エネルギープラズマは、人工衛星の電子回路に入射すると容易に計器を狂わせてしまうことが知られている。また、人体に入射すれば放射線による被爆となり、発ガンなどの危険性があるほか、被爆量が多ければすぐに死に至る。これらの宇宙線は、地上に到達する前に大気と衝突してしまうため、地表面で生活している間は大した問題にならないが、人類が宇宙空間で生活しようとすると大きな問題になる。内部磁気圏は、人類が宇宙空間に進出する際に最初に通過しなければならない宇宙空間であり、この領域の高エネルギープラズマの研究は、近い将来、宇宙に進出するであろう人類にとって、非常に重要である。
8月15−16日CRL研究会における追記事項メモ 内部磁気圏サイエンス関係で特に強調されたこと ・磁場モデルの構築(リングカレント) ・粒子E−Tとシミュレーションとの比較によるリングカレントイメージング ・プラズマ圏ダイナミクス(ロバの耳、sc、磁気嵐、VLF観測など) ・SAIDの磁気圏での観測(電場・粒子) ・bounce resonance 機器関係で特に強調されたこと ・dipole緯度の戦略 ・LEPを放射線帯でON(放射線帯) ・低エネルギーがかぶる(thermal ion, keV領域イオン) ・太陽活動極小期(2007−8年)のミッション。磁気嵐も観測できるが、 通常時の磁気圏もターゲットに入れる。 ・放射線対策が機器開発のfirst priorityか 、次が小型化
内部磁気圏ミッションでは、いくつかの研究戦略をとることにより、従来にない新しいデータセットをそろえ、この領域の物理過程の解明に寄与することを考える。具体的には、「磁場・電場・粒子・波動の同時観測」、「長期観測によるデータ蓄積」、「他の衛星ミッションとの連携」、「地上観測との連携」、「理論・シミュレーション研究との連携」である。
10Reよりも内側の内部磁気圏は、静止衛星も含めてこれまで数多くの観測が行われてきた。しかし意外なことに、GEOTAILやISEEが行ってきたような3次元粒子分布関数、磁場、電場の同時観測は、この10Reよりも内側の領域では、これまでほとんど行われていなかった。実際、CRRES衛星は磁場、電場、粒子分布関数を1年程観測していたが、3次元の分布関数、それに伴うイオンフローの観測は行えておらず、また電場も15秒の時間分解能しかない。AMPTE/CCEは5年以上内部磁気圏の観測を行ったが、電場の観測は無く、分布関数観測も2次元であった。EQUATOR-S衛星は3次元分布関数を観測していたが、プローブによる電場観測は行われておらず、また予定より早く半年ほどでミッションが終了してしまったために、サブストームの議論において重要な真夜中付近のデータが十分得られなかった。
1章で述べてきたように、内部磁気圏での物理現象は、磁場・電場・粒子・波動の4つの要素が複雑に絡みあった結果、生じている。例えば放射線帯粒子の加速メカニズムには、地磁気脈動やプラズマ波動がおそらく関連しているが、同時にグローバルな電場による内側への粒子の輸送と磁場の変化による断熱的な変動も関わっていると考えられる。これらの複雑なシステムを解明するには、この4つのパラメータの同時観測が非常に重要である。
この領域での粒子(特にイオン)の3次元分布の観測を難しくしている要素は、粒子のエネルギーが外部磁気圏に比べて上がり、10-100keV程度になっていることである。粒子計測器はその特性から、30-40keV以下の粒子を計測するelectrostatic analyzerと、100keV以上の粒子計測を得意としてきたSSDによる計測器に分けられる。内部磁気圏のイオンのエネルギー範囲は、この両計測器の間に位置しているために、これまで計測が難しかった。ここでは、SSDによる計測器の低エネルギー側限界を30keV程度まで下げ、electrostatic analyzerの高エネルギー側限界とつなげることにより、内部磁気圏の粒子のエネルギー分布を精度良く測定することを目指す。
前章で述べたように、EQUATOR-S衛星やCRRES衛星など、内部磁気圏衛星で比較的フルスペックの衛星は、寿命が短く(EQUATOR-S:半年、CRRES:1年)、統計解析に必要なデータを蓄積する事ができていない。特にサブストーム・磁気嵐のエネルギー量の分配や、内部磁気圏での物質収支を調べる際には、統計的なデータが非常に重要になってくる。本ミッションでは、ミッションライフを2年以上、となるべく長く設定することにより、統計解析が可能なデータを取得する。さらに、データレコーダーを有効に活用し、100%のデータ取得率を目指すことにより、失われるデータが無いようにする。
2年間のミッションにおけるサブストームと磁気嵐の観測回数は以下のように見積もられる。
・サブストームオンセットの観測可能性 ・データレコーダ運用により、100%のデータ取得率を仮定する。 ・1日に2回サブストームが起きるとする。 ・衛星が夜側のプラズマシートを観測する可能性は、全体の観測時間の1/3 365日×2÷3 = 243 イベント/年 ・オンセット時の磁場がtail-likeになる現象や、非常に速い変動が、 neutral sheet付近 のみに限られており、またY方向にも数Re程度しか 広がっていないとした場合。プラズマシート観測の1/10の確率で、 その現象を観測する、とする。 243 ÷ 10 = 24.3 →2年間のミッションで50イベントを集めることができる。 ・磁気嵐の観測可能性 ・データレコーダ運用により、100%のデータ取得率を仮定する。 ・1ヶ月に1回、磁気嵐が起きるとする。 →2年間のミッションで24イベントを集めることができる。
本格的な編隊飛行による内部磁気圏の探査はSCOPEミッションに譲るが、本ミッションでも、ある現象が観測されたときに別の経度、緯度における情報は重要である。特に、2006−7年頃の打ち上げを意識した本ミッションは、米国で計画されているMMSミッションとの連携が重要であろう。MMSミッションは2008年頃に打ち上げられ、磁場・電場・粒子・プラズマ波動を計測する4機の衛星が数百km〜1Re程度離れて編隊飛行を行う。このミッションの最初の10ヶ月間は、apogeeが10Re, perigeeが数Reの内部磁気圏軌道(赤道面)をとるので、本ミッションと連携し、異なる経度の情報を同時に得ることができるようになる。
MMS衛星は、最初の10ヶ月の内部磁気圏軌道が過ぎると、apogeeを30Re付近まで上げて磁気圏尾部を集中的に観測するようになる。この際は、MMSによる尾部プラズマシート領域と本ミッションによる内部磁気圏の同時観測が実現でき、サブストームや磁気嵐に伴う外部磁気圏から内部磁気圏へのエネルギーの流入、サブストーム開始領域の同定、等の研究に役立つデータセットが得られると予想される。
さらに、磁場・電場・粒子・波動を観測するフルスペックの衛星ではないが、内部磁気圏には、既存の衛星として、GOES(静止軌道:磁場、高エネルギー粒子)、LANL(静止軌道:高・低エネルギー粒子)、NOAA(極軌道、低高度:高エネルギー粒子)、DMSP(極軌道、低高度:低エネルギー粒子、磁場、プラズマドリフト)などの衛星が存在する。これらの衛星データと比較することにより、同じ内部磁気圏の他の位置での情報を得ることができる。
内部磁気圏は地球磁場が比較的強い領域なので、衛星と地上を磁力線で結んだ解析が行いやすくなっている。また、この領域で卓越する地磁気脈動は、地上まで伝搬して、地上多点観測網の磁力計で観測されている。これらのことから、本ミッションでは、特に地上の観測との連携も重要になってくる。CPMN(Circum Pan Pacific Magnetometer Netowark)及び210度地磁気ネットワークは日本の地磁気多点観測網として、日本の子午面及び各経度の赤道付近をカバーし、常時、磁場の観測を続けている。さらに、IMAGE、CANOPUS、SAMNET、INTERMAGNETといった海外の地磁気多点観測網も用いれば、地球規模のグローバルな磁場変動・地磁気脈動をモニターすることが可能である。
例えば、極域の磁場変動や中緯度のpositive bay、Pi2型地磁気脈動は、サブストームの開始時刻の指標の一つになっている。これらの変動と、サブストームの開始に伴って本ミッションの衛星で観測される変動の対応付けをする事により、サブストームオンセットのメカニズムを調べることができる。また、磁気嵐急始部(sc)の磁気圏の圧縮、昼側の地磁気脈動、磁気嵐時にリングカレントと尾部電流の作る磁場変動、といった現象に関しても、同様の解析が可能である。磁気圏の磁場変動の基礎データを調べる、という点で、地上磁場観測との連携は重要である。
さらに、地上からの極域のオーロラ観測では、サブストームの開始に伴うオーロラの急激な増光(initial brightening)や、オーロラがパッチ状に点滅するパルセイティングオーロラなどが観測される。前者はサブストームの研究において時間的な指標を与える、という意味で、Pi2脈動などとともに重要であり、後者は、その原因が全く分かっていないが、内部磁気圏における波動・粒子相互作用の結果である、と推定されている。極域の地上オーロラ観測との比較は、このような現象の物理を明らかにできる可能性がある。
内部磁気圏衛星で得られるデータを解析する際には、数値シミュレーションとの連携も重要になってくる。観測データを入力とし、シミュレーション結果をまた他の観測データと比較することによって、現象のメカニズムを詳しく探ることができる。例えば、磁気嵐時のリングカレントの発達を調べるために、本ミッションで観測された内部磁気圏の電場、粒子の分布関数、衛星・地上の磁場データ、を与えて粒子のドリフト軌道を計算し、その結果でてくるリングカレントの量を、実際の磁場データから見積もられる量と比較することにより、リングカレントの発達のメカニズムを探る。人工衛星や地上観測はグローバルな変動の中の数点の観測データを与えるが、数値シミュレーションを導入することにより、データの無い部分を補間することができる。
さらに観測データを数値シミュレーションに導入し、リアルタイムで走らせることにより、内部磁気圏の変動を予測することも可能であるだろう。内部磁気圏の高エネルギー粒子は、宇宙空間における人間活動に大きな影響を与えるので、このような予測は、将来の宇宙天気予報において、重要な要素となる。
前述したように、10Reよりも内側の内部磁気圏領域で磁場・電場・粒子・波動を同時に観測した衛星はこれまでほとんどなかった。これは、10Reよりも外側の外部磁気圏領域でISEE、GEOTAIL、Cluster-IIといくつもの衛星が長期観測を行ってきたのと対照的である。そういった意味で、内部磁気圏は、磁気圏物理学の中でも「残されたmissing領域」として、いまだに様々な物理メカニズムが解明されていない。本ミッションは、ちょうどGEOTAIL衛星が外部磁気圏に対してそうであったように、内部磁気圏を長期間、集中的に観測し、この領域で起きている物理メカニズムのかなりの部分を解明することができると予想される。1機の衛星でMHDスケール(イオンのサイクロトロン周期〜数秒〜以下)の変動を観測するこのミッションでは、いくつかの早い時間スケールの変動は未解明のまま、残される可能性がある。このやり残した仕事は、複数衛星・高時間分解能観測を柱とするSCOPEミッションで解明されることが期待できる。
内部磁気圏は、地球のダイポール磁場がエネルギーの大部分を支配し、磁気圏で最も高いエネルギーの粒子が生成される領域である。同様のシステムは、ダイポール型の磁場構造を持つすべての惑星・恒星に適用することが可能である。例えば、磁気嵐に伴う地磁気脈動(磁力線の振動)が、ダイポール磁場中を経度方向に伝わるにつれて、それと同じ速度で経度方向にドリフトしている粒子は、磁場からエネルギーをもらって加速され、放射線帯粒子を形成する可能性がある。こういった加速メカニズムを本ミッションで精査し、高エネルギー粒子生成過程を解明することによって、宇宙空間での高エネルギー粒子生成の一般的なメカニズムの一つを明らかにすることができる。
内部磁気圏ミッションの実用的なインパクトは、宇宙環境の調査、という点にある。放射線帯の高エネルギープラズマは、人工衛星の計器の故障を起こしたり、宇宙空間での人体に悪影響を及ぼしたりする。気象衛星、通信衛星、GPS衛星など、数多くの実用衛星が存在する内部磁気圏において、単に放射線帯粒子をモニターするだけでなく、その原因を探り、ひいてはその変動予測(宇宙天気予測)に役立てるための研究は、これからますます重要度を増していくであろう。こういった研究において、本ミッションは決定的なデータセットを与えることができる。
3.4.将来ミッション(放射線対策・小型衛星化)へのインパクト
内部磁気圏観測衛星はperigeeが非常に低い(1.1-2Re程度)赤道面軌道なので、放射線帯内帯・外帯の粒子の影響を直接受けることになる。このような過酷な状況下において、衛星を維持し、さらにプラズマの観測を行う技術は、これまでまだ確立されたものは無い。内部磁気圏ミッションでこのような技術の開発を行うことは、同様に放射線環境の厳しい惑星(水星、木星など)を探査する将来ミッションに対して、非常に有益である。
また、小型・軽量化されたシステムで磁場・電場・粒子・波動の同時観測を行う、という試みもさまざまな開発要素を含んでおり、ここで開発される技術は、重量制限の厳しい将来の惑星ミッションにも応用できるであろう。
・打ち上げ時期は2007ー8年頃
・衛星軌道はapogeeが6.6-10Re、perigeeが1.1-2Reの楕円軌道。inclinationは30度以下。摂動により、約1年で遠地点が地球を1周する。
・スピン衛星。スピン周期は3秒程度。スピン軸は太陽方向。
・衛星寿命は2年以上とする。
搭載機器とその重量は以下のようにまとめられる。(TBD)
高エネルギーイオン計測器 2.5kg? 高エネルギー電子計測器 1.5kg? 中エネルギーイオン計測器 1.5kg? 低エネルギーイオン計測器 3.0kg? 低エネルギー電子計測器 2.0kg? 磁場計測器 1.0kg? 電場計測器+プラズマ波動計測器 2.0kg? データレコーダー 1.0kg? thermal ion計測器 ? 合計 20.0kg?
計測器への要請に関しては、4.2.4を参照。
以下は高島さんの資料より抜粋
・測定可能エネルギー範囲(エネルギー分解能20keV、時間分解能100psec) TOF+SSD(C-Thin foil 10μg/cm2、440A Cluster-II参考) ・proton, He: 約30keV-数MeV (努力目標は20keV) ・Oxygen(CNO):約60keV〜(thin foilを薄くすれば40keVまで可能) ・粒子弁別はP, He, CNO-group, NeMgSi-group, Fe-group ・測定可能flux範囲: SSDのみ:Max/Min = 10^3前半以下 TOF:数10^3個/sec/方向 程度 (ADCの変換時間で制限) ・条件:検出部が十分低温(0℃以下) 各検出器の静電容量が十分小さい(Si検出器で数十mm角以下) ・3次元分布の時間分解能は1spin(3秒程度)、16sector/spin スピン軸に垂直な面内12方向/180度 ・カウンター情報: エネルギー:10ch、 TOF-E情報:8bit ・重量:2.5kg(センサー1.5kg+A4基盤2枚;CPUボード除く) ・電力:10W以下
放射線帯電子計測器への要請
1. J [1/(cm^2 s str keV)] 最大値・最小値(単位は、/cm^2 sec str keV)
CRRES (L=2-8) (最小値は静穏時のslot region付近の値)
180 keV: 10^2 - 10^6 550 keV: 10^0 - 10^5
1500 keV: 10^0 以下 - 10^3
LANL (L=6.6)
700 keV: - 10^3 2000 keV: - 10^1
3000 keV: - 10^0 6000 keV: - 10^-1
3. E [keV] 最大値:6MeV以上
4. E [keV] 最小値:500keV以下
5. エネルギー分割数: 10以上
6. 時間分解能 [s]:1spin
7. 角度分解能:16sector/spin
12方向ピッチ角/180度
ロスコーン方向 0.1度?
参考文献
(1) CRRES: Korth and Friedel, JGR, 102, 14113-, 1997.
Li and Temerin, SSR, 95, 569-, 2001
(2) LANL : Reevs, GRL, 25, 1817-, 1998.
Freeman et al., JGR, 103, 26251-, 1998
以下は、高島さんの資料より抜粋
・測定可能エネルギー範囲:20keV-500keV
500keV-10MeV
10MeV-
(エネルギー分解能20keV)
・測定可能flux範囲:Max/Min = 10^3 以下
・条件:検出部が十分低温(0℃以下)
各検出器の静電容量が十分小さい(Si検出器で数十mm角以下)
電子の低エネルギー側への高エネルギープロトン(500keV以上)の
混入が許容できること
・時間分解能は1spin(3秒程度)、16sector/spin、スピン軸に垂直な面内12方向/180度
・エネルギー分解能:10ch
・重量:1.5kg(センサー1kg以下+A4基盤1枚;CPUボード除く)
・電力:7W (センサー部3W+4W)
5.5W (センサー部1.5W、専用チップ使用の場合)
TBD
計測器に対する要請
H+ 1. J 最大値: 10^8(cm^2*sec*sr*keV/e)^-1
2. J 最小値: 10^5(cm^2*sec*sr*keV/e)^-1
O+ 1. J 最大値: 10^8(cm^2*sec*sr*keV/e)^-1
2. J 最小値: 10^2(cm^2*sec*sr*keV/e)^-1
He+ 1. J 最大値: 10^5(cm^2*sec*sr*keV/e)^-1
2. J 最小値: 10^2(cm^2*sec*sr*keV/e)^-1
但し、低フラックス側(one count level)を低くとりすぎないようにすることが
重要と思われる。CRRESの場合、感度が悪すぎて、通常時のイオンのデータが
ほとんどない。POLARも同様の問題があるようだ。
3. E [keV] 最大値:500 keV以上
4. E [keV] 最小値:50 eV以下 (thermal ion まで計測)ー>別の計測器?
5. エネルギー分割数: 32以上
6. 時間分解能 [s]:3秒程度
7. 角度分解能: 22.5°
参考文献
Krimigis et al. [GRL, p.329, 1985] AMPTE/CCEの分布関数の例(磁気嵐)
Gloeckler et al. [GRL, p. 325, 1985] AMPTE/CCEの分布関数の例(磁気嵐)
----------------------------------------------------------------------------
n(cm-3) average energy (keV)
L=3.8-4.7 L=6.1-7.0 L=3.8-4.7 L=6.1-7.0
----------------------------------------------------------------------------
total 3.22 1.26 56 keV 31 keV
H+ 57.7% 71.5% 64 keV 31 keV
O+ 38.8% 25.2% 41 keV 30 keV
He+ 1.8% 1.5% 49 keV 33 keV
----------------------------------------------------------------------------
Gloeckler et al. (GRL, vol.12, p.325, 1985) |Dst|=70-100nT
TBD
計測器への要請 A. |B| [nT] 最大値:65536 nT B. DC 要求精度 [nT]:最大分解能0.05nT以上(GEOTAIL方式で 領域によってrangeを変える) 変動成分(ノイズレベル)0.05nT以下 DC offset 1nT以下 C. DC サンプリングレート [Hz]:128Hz 簡単なマスト+fluxgate磁力計
計測器への要請
A. |E| [mV/m] 最大値:100mV/m
B. DC 要求精度 [mV/m]:最大分解能 0.05mV/m
変動成分(ノイズレベル)0.05mV/m以下
DC offset 0.05mV/m(100nTで0.5km/s)以下
C. DC サンプリングレート [Hz]:128Hz
参考文献(DC電場)
Baumjohann et al.(JGR, 90, 393, 1985)
静止軌道における統計結果 4km/s (Kp=4), GEOS-2
Rowland and Wygant(JGR, 103, 14959, 1998)
CRRESによる電場観測 1mV/m at L=4, 0.8mV/m at L=6 for Kp=7-9,
ダイポール磁場を仮定とすると、それぞれV=2km/s, 6km/s
Wygant et al.(JGR, 103, 29527, 1998)
CRRESによる電場観測 (ビッグストームの場合),
Dawn-dusk電場は〜5mV/m
TBD
TBD
データレコーダーを有効に用いて、100%のデータ取得率を目指す。
TBD